2026年05月14日
こんにちは。オールプロスです。 ある日の朝、一本の電話が鳴りました。
「エンジンがかからないんです!すぐ見に来てもらえませんか!?」
お客様の声は明らかに焦っています。
フォークリフトはあくまでもモノを運ぶための運搬機械。 直接お金を生むメインの機械ではなく、いわば脇役です。
でも、この脇役が突然動かなくなると——
会社にとっては大きな損害になります。
荷物が運べない。出荷が止まる。トラックが待ちぼうけ。 今まで「動いて当たり前」と思っていた人が、動かなくなった瞬間にこの機械の大切さに気づく。
「ちゃんとメンテナンスしておけばよかった……」
そう後悔する方を、私たちは何人も見てきました。
駆けつけた現場で、まさかの一言
さて、このお客様のフォークリフトを直しに行かなければ。 ありとあらゆる原因を想定して、部品や工具を車に積み込みます。 バッテリー、セルモーター、燃料系統の部品、テスター……。
万全の準備で現場に到着。 さっそく車両を見てみると——
ちょっと待てよ……。
コマツのディーゼルフォークリフト。 安全装置として、ブレーキを踏み込まないとエンジンがかからない仕様。
お客様に聞いてみると、 「え?ブレーキ踏むんですか?知らなかった……」
……これだけか。 このために来たのか。
……と、まぁ、こういうことって実は時々あります(笑)
現場でフォークリフトのエンジンが急にかからなくなると、誰だって焦ってしまいますよね。 でも、ちょっとしたことが原因で、簡単にエンジンがかかるケースは意外と多いのです。
今回は、フォークリフトのエンジンがかからないときの原因と応急処置の方法を、プロの視点でわかりやすくお伝えします。
フォークリフトのエンジンがかからない原因と対処法
エンジンがかからない原因は、大きく分けて7つあります。 焦らず、上から順番にチェックしてみてください。
原因①|バッテリーあがり
フォークリフトのエンジンがかからない原因で、最も多いのがバッテリーあがりです。

こんな症状が出ていたら、バッテリーが原因の可能性が高いです。
- キーを回してもセルモーター(スターター)が回らない、または回りが弱い
- メーターパネルの表示が暗い、または点灯しない
- ヘッドライトやホーンが鳴らない
なぜ起きるのか?
フォークリフトは車と違い、短距離の移動と停止を繰り返す使い方がほとんどです。 そのためオルタネーター(発電機)での充電が十分に行われず、バッテリーが慢性的に電力不足になりやすいのです。
また、長期間使用していなかった場合も自然放電でバッテリーがあがります。
応急処置:
- ブースターケーブル(ジャンプケーブル)で他の車両からジャンプスタートする
- 赤ケーブル → あがったバッテリーの+端子 → 救援車の+端子
- 黒ケーブル → 救援車の-端子 → あがった車両のエンジンブロック(アース)
- 救援車のエンジンをかけた状態で、故障車のキーを回す
- エンジンがかかったら、しばらくアイドリング(最低15〜20分)して充電する
- 頻繁にあがるようならバッテリー本体の交換時期のサイン
プロのワンポイント: バッテリー端子の接触不良もよくある原因です。端子が白い粉(硫酸鉛)で覆われていたら、ワイヤーブラシで清掃してみてください。これだけで復活することもあります。
原因②|セルモーター(スターターモーター)の故障
キーを回したときに「カチッ」と音がするだけで、エンジンが回らない。 あるいは完全に無音。
バッテリーは充分にあるのにこの症状が出る場合は、セルモーターの故障が考えられます。
セルモーターとは、エンジンを最初に回転させるための電動モーターです。 これが壊れると、エンジンを始動させることができません。
応急処置:
- セルモーター本体を軽くコンコンと叩いてみる(ハンマーや工具の柄で)
- 内部のブラシ(接点)が固着している場合、振動で一時的に復活することがあります
- これはあくまで応急処置。叩いて動いたとしても、近いうちに完全に壊れる前兆です
- それでもダメなら専門業者に修理を依頼してください
- セルモーター自体の交換が必要になるケースが多いです
原因③|ギアが入っている(前後進レバー)
意外と見落としがちなのがこれです。
フォークリフトの多くは、安全装置として前後進のギアが入った状態ではエンジンがかからない仕様になっています。
これは誤ってエンジンをかけた瞬間にフォークリフトが動き出すことを防ぐための安全設計です。
対処法:
- 前後進レバーを「N(ニュートラル)」に戻す
- レバーがニュートラルの位置にあるか、目視と手で確認する
- 特に複数の人が同じフォークリフトを使う現場では、前の人がギアを入れたまま降りていることがよくあります
原因④|ブレーキを踏んでいない
冒頭のエピソードがまさにこれです。
コマツをはじめとする一部メーカーのフォークリフトでは、ブレーキペダルを踏み込んだ状態でないとエンジンがかかりません。
これも安全装置のひとつで、車のAT車で「ブレーキを踏まないとエンジンがかからない」のと同じ仕組みです。
対処法:
- ブレーキペダルをしっかり奥まで踏み込んだ状態でキーを回す
- 「軽く踏んだだけ」ではスイッチが反応しないことがあるので、グッと力を入れて踏む
- 特に初めて乗るメーカー・車種のフォークリフトでは、この仕様を知らないことが多い
プロのワンポイント: メーカーや車種によってエンジン始動時の安全装置が異なります。コマツはブレーキペダル式が多いですが、トヨタやニチユ三菱は別の方式を採用していることもあります。新しいフォークリフトを導入したら、まず取扱説明書で始動手順を確認しましょう。
原因⑤|燃料切れ・燃料系統のトラブル
「まさかそんなことが……」と思うかもしれませんが、燃料切れは意外と起きます。
フォークリフトの燃料計は車ほど精度が高くないことが多く、「まだ残ってるはず」と思っていたら空だった、というケースがあります。
また、長期間放置した車両では燃料フィルターの詰まりや、ディーゼル車の場合は燃料配管内のエア噛みが原因でエンジンがかからないこともあります。
応急処置:
- まず燃料の残量を確認する(燃料計が動かない場合はタンクのキャップを開けて目視)
- 燃料切れの場合は燃料を補充する
- ディーゼル車で燃料切れを起こした場合は、燃料を入れただけではかからないことがある
- 燃料配管にエアが入っているため、エア抜き(プライミング)が必要
- 燃料フィルター付近にあるプライミングポンプ(手動ポンプ)を何度も押してエアを排出する
- LPG(ガス)車の場合はボンベの残量確認とバルブが開いているかをチェック
原因⑥|エンジンオイル不足・冷却水不足
一部のフォークリフトには、エンジンオイルの油圧が低下すると自動的にエンジンを停止させる保護機能が付いています。 また、オーバーヒート後にエンジンがかからなくなることもあります。
対処法:
- エンジンオイルのレベルゲージ(ディップスティック)を確認する
- 油量がLOWレベル以下なら、指定オイルを補充
- 冷却水(ラジエーター液)の量を確認する
- リザーバータンクが空になっていたら、水を補充(応急処置として水道水でもOK)
- オーバーヒートの場合は、エンジンが十分に冷えてから再始動を試みる(最低30分以上)
プロのワンポイント: オイル不足や冷却水不足は、どこかに漏れがある可能性が高いです。応急処置で動いたとしても、早めに専門業者に点検を依頼してください。
原因⑦|ヒューズ切れ・電気系統のトラブル
上記のどれにも当てはまらない場合、ヒューズ切れや電気系統のトラブルが考えられます。
- スタータリレーのヒューズが切れていると、セルモーターに電気が行かない
- メインヒューズが切れていると、全体的に電気が来ない
- キースイッチ(イグニッションスイッチ)自体の接触不良
対処法:
- ヒューズボックスを開けて、ヒューズの断線を確認する
- ヒューズボックスの位置は車種により異なるが、多くはダッシュボード下やエンジンルーム内
- 切れたヒューズがあれば同じアンペア数のヒューズに交換
- ヒューズが繰り返し切れる場合は、配線のショートなど根本原因があるため、専門業者に相談
【保存版】エンジンがかからないときのチェックリスト
現場ですぐに使える、原因別のチェックリストです。 このページをブックマークしておくと、いざというとき便利です。
| 順番 | チェック項目 | 確認方法 |
|---|---|---|
| ① | ギアはニュートラルか? | 前後進レバーの位置を確認 |
| ② | ブレーキを踏んでいるか? | ペダルをしっかり奥まで踏み込む |
| ③ | 燃料はあるか? | 燃料計を確認、必要ならタンクを目視 |
| ④ | バッテリーは大丈夫か? | メーターの明るさ、ホーンが鳴るか |
| ⑤ | エンジンオイル・冷却水は? | レベルゲージとリザーバータンクを確認 |
| ⑥ | ヒューズは切れていないか? | ヒューズボックスを開けて目視 |
| ⑦ | セルモーターは回るか? | キーを回したときの音で判断 |
①〜③は「操作ミス・うっかり系」で、自分ですぐに解決できます。 ④〜⑦は「機械トラブル系」で、応急処置はできますが、根本的には専門業者の対応が必要です。
補足コラム|日常点検でトラブルを未然に防ぐ
フォークリフトのエンジントラブルの多くは、日常点検で未然に防げます。
労働安全衛生規則では、フォークリフトの使用前に**始業前点検(作業開始前点検)**を行うことが義務付けられています。
毎日の作業前に、最低限これだけはチェックしましょう。
- エンジンオイルの量 — レベルゲージで確認。減っていたら補充
- 冷却水の量 — リザーバータンクの水位を確認
- 燃料の残量 — 前日の使用量から逆算して、翌日分が足りるか
- バッテリーの状態 — 端子の腐食や緩みがないか目視
- 異音・異臭がないか — エンジン始動時に普段と違う音やにおいがないか
たったこれだけのことで、突然のエンジントラブルを大幅に減らせます。
「動いて当たり前」のフォークリフトが動かなくなってから後悔するより、毎朝1〜2分の点検で安心を手に入れるほうが、ずっと賢い選択です。
補足コラム|ディーゼル車特有の注意点「グロープラグ」
ディーゼルエンジンのフォークリフトを使っている方に、もうひとつ知っておいてほしいことがあります。
ディーゼルエンジンは、冬場の寒い朝にエンジンがかかりにくくなることがあります。 これは故障ではなく、ディーゼル特有の仕組みによるものです。
ディーゼルエンジンにはガソリン車のような点火プラグがなく、空気を圧縮して高温にし、そこに燃料を噴射して着火させます。 気温が低いとシリンダー内の温度が上がりにくく、着火しにくくなるのです。
そのため、ディーゼル車にはエンジン始動を補助する**「グロープラグ」**(予熱装置)が付いています。
正しい始動手順:
- キーを「ON」の位置に回す(エンジンはまだかけない)
- メーターパネルに**予熱表示灯(グロープラグランプ)**が点灯する
- ランプが消えるまで待つ(通常5〜15秒。気温が低いほど長くなる)
- ランプが消えたらキーを「START」に回してエンジン始動
寒い朝に「エンジンがかからない!」と焦る方の中には、予熱を待たずにすぐキーを回している方がけっこういます。 グロープラグの予熱を待つだけで、冬場のエンジン始動がスムーズになりますよ。
エンジンがかからないときの判断フローチャート
最後に、現場で迷ったときの判断の流れをまとめます。
STEP 1:まず基本を確認 → ギアはN?ブレーキは踏んでる?燃料はある? → YES → STEP 2へ / NO → 該当箇所を直して再始動
STEP 2:電気系統を確認 → メーターは点く?ホーンは鳴る? → YES → STEP 3へ / NO → バッテリーあがり or ヒューズ切れの可能性 → ジャンプスタートまたはヒューズ交換
STEP 3:セルモーターを確認 → キーを回すとセルは回る? → YES → STEP 4へ / NO → セルモーター故障の可能性 → 軽く叩いて試す → ダメなら業者に連絡
STEP 4:燃料系統を確認 → ディーゼル車でグロープラグの予熱は待った?燃料切れ後にエア抜きはした? → 対処しても始動しない場合 → 専門業者に連絡
応急処置を知っておくだけで、現場は変わる
今回ご紹介した原因と応急処置を知っておくだけで、急にフォークリフトのエンジンがかからなくなっても慌てずに対処できます。
焦ることもないし、朝イチで業者に電話することもない。
……ちょっと寂しいですが(笑)
でも、現場が止まらないことが一番大事です。
それでも、自分では解決できないトラブルは必ずあります。 そんなときは、いつでもオールプロスにご連絡ください。
私たちは常に「縁の下の力持ち」として、御社の現場を支えています。
フォークリフトのエンジントラブル、故障の修理、あるいは「もう古いから買い替えたい」というご相談まで。
何かあったときに頼れるパートナーでありたい。
オールプロスは、そう思って日々フォークリフトと向き合っています。
まとめ
| 原因 | 症状 | 自分で対処 |
|---|---|---|
| バッテリーあがり | セルが回らない、メーターが暗い | ○(ジャンプスタート) |
| セルモーター故障 | カチッと音がするだけ | △(叩いて一時的に復活する場合あり) |
| ギアが入っている | エンジンが反応しない | ○(ニュートラルに戻す) |
| ブレーキ未踏 | エンジンが反応しない | ○(ブレーキを踏み込む) |
| 燃料切れ・エア噛み | セルは回るがエンジン始動しない | ○(燃料補充+エア抜き) |
| オイル・冷却水不足 | 警告灯点灯、オーバーヒート | △(補充で応急処置) |
| ヒューズ切れ | 電気系統が全く動かない | ○(ヒューズ交換) |
覚えておいてほしいのは、①〜④の「操作ミス・うっかり系」が原因の半分以上を占めるということ。
まずは落ち着いて、基本的なところから確認してみてください。



